サポステでの若者就労支援の実態

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みなさんこんにちは、テラド(@terashin1226)です。

私は2018年の9月から若者サポートステーション、通称「サポステ」というところで、就労支援のお仕事をしています。

2019年6月に起こった川崎での事件以降、いわゆる「ひきこもり」に対する注目が集まっています。

その少し前には40歳〜64歳のひきこもり当事者の推計数は、部屋から出られない人から、趣味に関する用事の時だけ外出できる人までを含めた「準ひきこもり」で推計61万3000人。2015年度にほぼ同じ条件で出した15~39歳の推計値は54万1000人で、合わせて100万人を超える当事者がいることがわかりました。

世間では国の政策について批判の中で「就労ありきの施策はどうなんだ」。ネットでは「サポステは失敗だ」という声も聞かれました。

サポステは失敗だった~40才以上ひきこもりが61万人。「居場所」に予算を(田中俊英) - Yahoo!ニュース
つまりは、「居場所」を利用した「日常生活支援」を経験する段階にある人々が大量に存在する。

就労支援の現場にきて9ヶ月ではありますが、このような批判は私の感じている実態と違います。

本記事では、若者の就労支援現場のリアルをお伝えできればと思います。

サポステの支援対象者

具体的に話を進める前に、サポステが支援をしている方のはどんな方々なのかお話しします。

厚生労働省の公式サイトでは

働くことに悩みを抱えている15歳~39歳までの若者

と定義されています。非常に曖昧でわかりづらい。。

サポステが実体としてどういう方を支援しているかご紹介します。

「準ひきこもり」とされる方

私自身は「ひきこもり」は人の属性ではなく、行為だと思っています。

何らかの理由で社会から孤立してしまった状態、「ひきこもらされている」というのが正しい姿だと思います。

そして、ひきこもらされる背景には、経済的困窮・障害・親子関係・介護・夫婦問題・親子問題・学校問題とほんとに様々で、それが複合的に絡まっています。

そのような方々を一括りにし「ひきこもり」という抽象的なワードで語ることの「雑さ」については指摘しておきたいと思います。

ただ、「ひきこもり」という言葉には厚労省が定めた定義があり、かつ統計的な共通認識のためにこの言葉を使いたいと思います。

ひきこもり:仕事や学校にゆかず、かつ家族以外の人との交流をほどんどせずに6ヶ月以上続けて自宅に引きこもっている状態。

※この定義では統合失調症などの疾病の方を含みません。

サポステが支援の対象としているのは、以下の定義のような「準ひきこもり」とされる方がもっとも近いと感じています。

準ひきこもり:ふだんは家にいるが、自分の趣味に関する用事のときだけ外出する

いわゆる「ひきこもり」とされる方々に関して、サポステと多機関で分けるとすると、以下のような図になります。

図にはないですが、ひきこもり当事者による自助会や、家族会も支援機関として大きな役割を果たしています。

ひきこもりの方の支援について議論をする際には、「ひきこもり」なのか「準ひきこもり」なのか明確に分けて議論をしないといけないと思います。

そして「ひきこもり」とされる方は保健所や子ども・若者相談、またひきこもり地域支援センターが支援機関となっています。

サポステ自体の存在についての是非はあると思いますが「サポステはひきこもり対策に有効でない」という批判に対しては、そもそも支援対象ではないというのが答えになるかと私個人は考えています。

相談に来られた方に明確な就労ニーズがない場合はサポステの対象ではないので、子ども・若者の相談窓口、保健所等にリファー(支援依頼)しますので、無理やり働かせるということはありません。

私が働いている豊中市においては、ひきこもり相談をする「若者支援総合相談窓口」と「とよの地域若者サポートステーション」が併設されており、両者をシームレスに支援することができます。

「〇〇は失敗だ」という前に、相談者ファーストの立場で、各機関が自身の専門性を知る・高めると同時に、相談者が必要な支援を受けられるように連携していくことのほうが重要です。

また、スモールステップで支援を進めていった先のゴールの一つのとして、就労は大事だと思います。働くことで大きく自分を変えていった若者を見てきました。自立して生活しているというのは、非常に大きな自信に繋がります。

支援のプロセスが重要なのであって、就労という出口だけが不当に批判されることは若者自身の可能性を閉ざす危険もはらんでいると思います。

障害を持つ方

「うつ病」や「パニック障害」などの精神疾患を患い、就労から遠ざかってしまった方も相談に来られます。医療機関とも連携しながら、生活ペースを作っていきます。疾患が回復状態にない場合は、リワークや就労移行支援事業所へも繋いでいきます。

また「就活がうまくいかない」というニーズから支援がスタートして、その背景に発達障害があったという方が非常に多いと感じています。

本来は障害を持った方の就労支援は「障害者就業・生活支援センター」、通称「就ポツ」の支援領域になるかと思いますが、実態としてはサポステでも支援を行っています。このあたりはサポステの委託を受けている事業者次第で、障害を持つ方の支援はしない、と明確に切り分けているかもサポステもあるかもしれません。

ご本人の障害受容に向けた支援を含め、長期間の支援となっていきます。

障害手帳取得や障害年金申請を支援することもあれば、受給者証のみ取得して就労継続支援A型・B型への就労を支援することもあります。

サポステでの支援の流れ

サポステではすぐに「働かせる」支援をするのか、というとまったくそんなことはありません。支援が1,2年かそれ以上の長期にわたるケースがほとんどです。

ご本人のニーズを把握しながら、それぞれに合わせて「伴走型支援」を行っていきます。

私の勤める「とよの地域若者サポートステーション」では、多くの専門職(キャリアコンサルタント、臨床心理士、精神保健福祉士、看護師、ファイナンシャルプランナー、社会保険労務士)が支援に関わっています。

ここでは大体の支援の流れをご紹介します。

支援の土壌を作る

まずは相談に来てくれた方との信頼関係を作っていきます。

インテーク面談で背景を聞き出し、特性や課題背景を「見立てる」

インテークとは初回の面談のことです。

親御さんから相談で本人が自ら望んでいないケースは特にそうなのですが、インテークでは「次にまた相談に来てくれること」を重要視します。必要以上にお話しも聞きませんし、「趣味の話をして終了」ということもあります。

相談者が話しやすい、心理的な安全を確保してもらうことを重視して聞き取りを行っていきます。

徐々に関係性ができてくると、色々とお話しが聞けるようになります。すでに就労経験がある方は前職での様子を確認していきます。相談を進めていく中で不登校歴を含む特徴的なエピソードがあった場合は発達障害の可能性も視野に入れて成育歴を詳しく聞いていくこともあります。

その中で、就労に向けた課題に対する「仮説」を立てていきます。このような行為を支援業界では「見立て」と言います

多面的に「見立て」、支援方針を立てる

インテーク担当者=インテーカーの見立てを、会議で共有し、様々な専門家から意見をもらうことで、「見立て」の精度を上げていきます

また「〇〇の点は、もう少し確認しておいたほうがいいのでは?」と次回以降の面談での確認事項や、起こりうるリスクについても話し合います。障害がある方の場合は、適した連携先について共有します。

見立ての結果、まだ就労が遠い方については、プログラムを通じて必要なスキルを身につけてもらいます。

適職を見つける、選択支援をする

見立てが終わり、トレーニングを経て、就職が近いとなれば実際に就労支援に入ります。

個人的には下図のような「CAN(できること)、WILL(やりたいこと)、MUST(やるべきこと)」のフレームワークに沿った支援をしています。

一般的にはこの3つの要素が交わる部分が「適職」と言われています。

体験を通じてCANを育てる

若者の就労支援をする中で、一番重要なのはCANだと感じています。サポステに相談に来る方は「こんな自分に何ができるんだろう…」と、自己効力感が低い状態です。

まずは「職業適性検査(GATB)」を受けてもらうことがほとんどです。何をしてよいのか全く見当もつかない方にとっては「選択肢」ができることで仕事が選びやすくなります

次に、踏み出せないという方には「職場体験」というプログラムを用意しています。実際の職場で体験をさせてもらうプログラムです。2週間ほどほんとの職場で経験が積めますので、業界、職種が自分に合っているのか、実際の体験を通じて確認することができます。

職場体験以外にもプログラム等、実際の体験を通じて「CAN=〇〇ができた」を一つ一つ丁寧に拾い上げます。そのCANが次のステップに踏み出すときに大きな力となります。

WILLを可視化し、道筋を立てる

「CAN」が増えると、自然と自己効力感が回復し「〇〇してみたい」という意欲=WILLがでてきます。面談などで、このWILLについて一緒に言葉として共有していきます。

例えば「一人で自立して生活したい」などです。そういう言葉がでてくると支援者はすかさずキャッチし「え、それめちゃくちゃいいね」と共通のゴールに据えます。「じゃあ収入はどれくらい必要かな?」や「週何回働けばいいかなぁ」とゴールから逆算して、一緒に見通しを立てていきます

MUSTを知り、現実調整を行う

「CAN」が増えて自己効力感が回復し、「〇〇したい」というWILLがでてきたら、実際に職場とマッチングに入ります。このマッチングは「理想と現実のすり合わせ」作業になります。

いくら理想があっても、現実としてそのまま叶うかは別問題です。就活の場面では、面接に落ちてしまうこともあるでしょう。ここが就労支援の中での正念場、失敗体験にも伴走しながら、落としどころを見つけていきます。

伴走型支援で見守る

めでたく就職が決まった後も支援は続きます。定着支援です。定期的なモニタリングのほか、職場内での人間関係など働きだしてからの課題も面談を通じてフォローします。また、本人がアルバイトから正社員へのステップアップを望むようであれば再び就職支援を行っていきます。

このように「就労」は一旦のゴールでしかなく、本人が自分に自信を持ち、自立して生活を続けられるようになるまで支援は続いていきます

まとめ

本記事では地域若者サポートステーションでの支援の実態を紹介しました。

若者の就労支援については、自己効力感の回復が重要です。

新卒の就活であれば「CAN」よりも「〇〇したい!」という「WILL」が先行されます。「CAN」は会社に入ってから成長させればよいからです。しかし、サポステに来られる方は、いわゆる「ひきこもり」状態だったり、挫折経験から「WILL」が非常に低い状態です。

プログラムや職場体験を通じて、「CAN」を育てていくことで「WILL」を回復させていく、そして社会から求められる「MUST」との折り合いを伴走しながらつけていってもらう。現場ではきめ細かいチーム支援を行っています。

いきなり就労させるのはどうなんだ

ネットなどでこんな意見を見聞きするたびに、就労支援の実態を伝えなければと思い、本記事を執筆しました。

「ひきこもりに就労支援はダメ」という話ではなく、重要なのは様々な段階の支援がシームレスに連携していくことです。このことをみなさんにはわかっていただければと思います。


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