好きな歌詞10選書き連ねていきます。偏見だらけの10選ですが、このうち1曲でもあなたの大切な曲になってくれたらうれしいなと思います。
1曲目 くるり 太陽のブルース
「大事なことは、忘れたりしないように
どこかで拾った 紙切れに書いておこう」
これ、すごいなと思って。
今の日本のポップミュージックだと、大事なものは大体心に刻みますよね…
心に刻むってもうさぶいです…
それより、岸田さんが書いたような書くのは「どこかで拾った紙」でいいから忘れたくない、という切実さ**のほうに、トンっと不意を突かれました。
これを曲のど頭に持ってくるって、やっぱ岸田さんは天才ですね。
2曲目 きのこ帝国 海と花束
「僕たちはいつも かなわないものから順番に愛してしまう」
ニヒリズム的でドキッとするフレーズです。
人間の欲望を、実にリアルに捉えています。それをポップソングの中でさりげなく提示する。
すごい力量。
人間の欲望を亢進させるのは、実は「抑圧」だ、という事実を、これだけ詩的に表現した一文はないでしょう。
そして、それを「欲する」ではなく「愛してしまう」と表現したのがすごい。
「愛する」という、一般的に美徳とされていることすら、俯瞰してみています。
そして、ただただペシミスティックに陥りがちなテーマを、至極のポップソングに仕上げているのは
「伝えたいことなんて とっくのとうにない」
「錯覚おこしてる」
「それだけなんだよ それだけなんだよ」
というリフレインです。
リフレインする、ということが、自分に言い聞かせているような印象を与えます。
自分自身の欲望や愛するという行為をペシミスティックに見つめながらも、言葉にできない感情を抱えている主人公が、海に花束をもって現れます。
この「花束」というのが、決してだれにも渡せない気持ちのメタファーになっています。そして「海」が背景として現れることで、他者との絶対的な距離が想起されます。
我々は、誰もが人に手渡すことのできない「花束」を抱えながら生きているのかもしれません。
この曲の構成は、一つ目に紹介した「太陽のブルース」と似ています。
「太陽」「海」という超自然的なものと、「ブルース」「花束」という人為的なものを組み合わせることによって、絶妙な「違和感」を生み出しているんです。「人為的なもの」と「自然」との対比というのは、世代を超えても扱われる普遍的なテーマなんですよね。
3曲目 ZAZENBOYS はあとぶれいく
「いつか悪魔と対決する日を待っている
惰眠を貪り食っている 悪魔がくるのを待っている!
なーんか無性にささくれだって いらいらしてる
サカリのついたメス猫みたいに
かーきむしって破れた皮膚が 真っ赤な血で滲む
サカリのついたメス猫みたいに**」
この曲が収録されているアルバム「すとーりーず」は、日本語ロックの1つの完成系を示した名盤です。必聴です。ぶっ飛びます。
作品全体として、ボードレールの詩のようなリアリズムを有しています。
私がリアリズムといっているのは、*的確な心象描写・風景描写という意味ではありません。
普段、我々が持っている感覚というのは、本来は言葉にできないものです。
「うれしい」「かなしい」「楽しい」と表象されますが、それは感情に一応の説明を付けたものです。
向井秀徳という男は、そういう説明をつかって感情を指し示すのではなく、言葉により感情を揺り動かし別の言葉へと漂着させる、または漂着させずそのまま泳がせるということを、このすとーりーずという作品でやってのけた。
感覚と表象を一度引きはがし、再接近を試みた実験作とでもいえるでしょうか。
紹介した歌詞は、人間のヒロイズムな部分を嘲笑うかのようです。自我のあほらしさとはかなさを表現しています。
誰もが持つ、「俺の人生は素晴らしいものだ」という思念みたいなものを「サカリのついたメス猫みたいに」と歌うのです。
この歌詞にはペシミスティックな感覚はありません。
淡々と、人間の所業を浮き彫りにしてきます。
4曲目 キリンジ エイリアンズ
「まるで 僕らはエイリアンズ 禁断の実 頬張っては 月の裏を夢見て」
「君を愛してる エイリアン この星の僻地の僕らに 魔法をかけてみせるさ」
日本のポップソング史上最高の歌詞だと思っています、このエイリアンズ。
「まるで僕らはエイリアンズ」
まるでというのは、本来、既知の事象に対して使う言葉です。
「まさに〇〇のようだ」という意味で使いますよね。
エイリアンズというのは本来「よくわからない」ものです。
リドリースコットの「エイリアン」がヒットする前は、エイリアンには異星人という意味はなかったそうで、元は「異邦人」や「外国人」という意味があります。
「まるで僕らはエイリアンズ」というのは、未知に対する全肯定だと思います
「わからない」という意味の単語に、「まるで」とつけることで、わからないものを現実世界に無理矢理引きずり込んでいます。
考えてみれば、我々が「知っていること」なんて、世界の数パーセントしかなくてあとはファンタジーですよね。
親戚だろうが、他人だろうが、夫婦だろうが、他者の考えてることなんてまったくわからないし、自分がなぜ生きてるかだってわからない。
ただ我々ができることは、そのファンタジーと自分との関係を壊したり、作りなおしたりすることだけです。
1枚のおさらがあったとします。
「これは皿だ」と思えば、サラダをよそう皿になります。
でも「これは灰皿だ」と思えば、それはタバコの灰を落とす灰皿となる。
ポップソングの使命とは、そういう「ファンタジー」と「現実」の接点を作り出し、聞いた人の世界との関係を再構築することだと思っている。
リドリースコットが、エイリアンの言葉の意味を変えてしまったように
わからなくても愛してるって、究極の愛ですよね。
「大好きさエイリアンズ わかるかい?」
5曲目 ストレイテナー シンクロ
「大切なのに 傷つけて 傷つけるのに 守りたくて
それでも 弱さを見せ合って 温めあって 積み重ねてきた」
「あの日の約束は 叶わなかった それもいまでは 僕の一部だ」
人間の心って目には見えなくて、でもそれを目に見える言葉や行動に変換して、他人とコミュニケーションをとっています。
でもその言葉や行動って、必ず言いすぎるか言い足りないか、100%変換できることってないんですよね。
だからこそ、実際の心はどうなっているのかっていうのを注意深く見ていかないといけない。
A が A に変換される人もいれば、A が Bに変換される人もいる。
コミュニケーションを積み重ねていくことで、その人の変換の癖をくみ取っていく。
それが信頼なのかなぁと思いました。
6曲目 LyuLyu メシア
「できるだけ長く 首をしめて 息をとめて 息をとめる
死にやしないけど 死ねやしないから これじゃ許されないよな」
「明日は笑って 無理やり笑って 何とか笑って 必死で笑って
生きていくから 死にやしないから それで許してくれませんか」
衝撃的な歌詞。
「息をとめて 息をとめる」
同じ息を止めるという意味なんですが、このリフレインが妙に心地いい違和感を与えています。時間の奥行と、その行為への切実さも感じさせます。
この曲を聴くとヒリヒリした感情を思い出します。
キリスト教では原罪という概念があります。人間は誰もが罪を持っていると。
でも、ほんとに生きるには「誰かに許してもらう」必要なんてあるんでしょうか。
7曲目 Civilian 顔
「ああ世界は なんて平等だ 生まれたからには もう歩くしかないんだよね
間違いだらけのわたしは 今日も確かに生きてる ずっとこうして生きていく」
6曲目のLyuLyuが改名してCivilianというバンドになりました。
フロントマンであるコヤマヒデカズの成長も垣間見えます。
生きるというのは、誰かに許されようが許されまいが、一度産み落とされたら歩いていくしかないという現実。
生きたいと思おうが、死にたいと思おうが、私たちは「生きている」。
間違っていようが「生きている」
「ずっとこうして生きていく」というのは、コヤマの意思表示でしょうか。
間違っていようが正しかろうが、ただただこうして生きている。
そのこと自体が生きる意思へつながっていく。
8曲目 GLIMSPANKY 大人になったら
「あぁこんなロックは知らない 要らない 聴かない 君が
上手に世間を渡っていくけど 聴こえているかい
この世のすべては 大人になったらわかるのかい」
一見不思議な歌詞です。ロックファンに呼びかけるのではなく、ロックを聴かない人に呼びかけている。
もちろんこれは、ロックファンに向けてのメッセージだと思います。
相対する人たちを表明することで、自分の位相を明らかにしファンとともに立っていることを表現している。ちょっとひねくれた意思表示ですが、そこが気に入りました。
9曲目 backnumber 瞬き
「幸せとは 星が降る夜と 眩しい朝が 繰り返すようなものじゃなく
大切な人に降りかかった雨に傘をさせることだ」
人間の救いって、実は誰かから施しを受けることじゃなくって、誰かに施しをできることなんだと思います。
もうこれ以上の言葉は必要ないですね。日本のロック史上にのこる歌詞だと思います。素晴らしい。
10曲目 ACO 未成年
「生きてる意味がないって カッコつけて
そんなことなどない! 笑ってBaby 愛している」
「未成年とはとても 微妙でぐらついた言葉
あなたには ちゃんと 意見がある
少しずつ あなたは変わっていくのよ」
愛しているぜ、みんな。
間違ってもいいからな。変わっていくんだぜ、意見もなにもかも。
だから死なないで生きていこうな。
最後までお読みいただきありがとうございました!
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